角膜移植について
どういう人が手術を受けるの?
角膜移植は、角膜に異常があるために起きる視力の低下を改善したい人、眼部に痛みを感じるため、その痛みを取り除きたい人、そして老化や白内障の手術後におこる退化の防止として、眼球内部の構造を保護するために行われます。
円錐角膜では、初期段階であれば視力の低下は眼鏡で矯正でき、中等度くらいまでであればハードコンタクトレンズを使用することで視力の矯正ができるのですが、症状が進行して高度まで来ると、コンタクトレンズの違和感が強くなり使用できなくなります。
こうなると残されているのは外科的手術となり、角膜移植手術は円錐角膜に対して行われる手術のうち一番症例の多い治療術とされています。
角膜移植とは
角膜移植とは、アイバンクを通して死んだ人の健康な角膜を移植して病気や損害のある角膜と取り換える治療法で、外傷や感染症、遺伝的疾患などの様々な原因によって角膜が弱くなったり、形状が悪くなることがあり、薬品などによる治療では改善できない時に行われるものです。
この手術には大きく2種類あり、変成や混濁している箇所が浅い場合には、角膜の表層を交換するだけの表層角膜移植手術を行います。しかし、全体が濁っていたり変性を起こしている場合には、全体を入れ替える全層角膜移植手術を行う必要があります。
この角膜移植の手術は数多くある移植手術の中ではもっとも成功率の高いものといわれています。
角膜移植のリスクについて
角膜移植は、数多くある移植手術のなかでも最も安全で成功率は90%以上といわれていますが、手術ですので全くリスクがないというわけではありません。危険の伴わない手術などないからです。
また、角膜移植が無事に終了したとしても、子供などで角膜が小さい頃から濁っていたために移植後も弱視が残ってしまい、良好な視力が得られないという場合があります。
手術後移植された角膜内皮は、正常に活動して角膜の厚さをコントロールできるようになるまでに時間がかかりますので、しっかりと見えるようになるには1〜2週間かかります。さらに、移植した角膜が拒絶反応を起こし、白く濁ってしまうこともあります。
副作用について
角膜移植の手術の副作用としては、せっかく移植された角膜に拒絶反応が起きてしまい白く濁ってしまう場合があり、乱視・感染・移植片の内皮障害・出血・網膜はく離・緑内障・白内障などの合併症を併発する可能性があります。ですから術後状態が安定するまでは、しっかりと治療に取り組む必要があります。
また、しっかりと術前にチェックは行われますが、ごく稀に提供された角膜から病気に感染してしまうことがあります。さらに、他の手術と同様に、麻酔または薬品に対する拒絶反応や反作用から死亡したり、脳障害を起こすことがあります。
また、術後に使用する点眼薬にはステロイドが含まれているため、光に対して過敏になったり視力が低下したりすることがあります。
角膜片の提供
角膜片の提供はあらかじめ生前にアイバンクなどに登録している人や、自分が死んだときに角膜を必要とする人に贈呈すると遺言に残している人などは、アイバンクなどの公的機関を通して必要とされる場所に送られます。
角膜の贈呈は匿名にて行われることが原則となっており、この場合性別・人種・眼鏡の必要可否などは一切関係なく、贈呈先にも一切分からないようになっています。
また、収集された角膜片は感染症などの病菌がないかなど厳しくチェックされ、保存液に漬けられ貯蔵されます。近眼や老眼はもちろん、網膜などの疾患で目が不自由な人であっても角膜に異常はなく、提供することができるようになっています。
アイバンクとは
アイバンクとは厚生労働大臣の許可により運営が許された公的機関で、角膜をあっせんする機関です。現在は、各都道府県にアイバンクが置かれ活動しています。
アイバンクに登録しておくことで、死後に自分の角膜を提供するという意思表明になり、登録には年齢制限などは一切ありません。
登録者から死亡の知らせが入ると、病院もしくは死亡人の自宅に眼科医が訪問し、摘出の処置を行います。この処置にかかる時間は約1時間程度となり、摘出した角膜は通常栄養液という液体につけて数日間貯蔵されます。
収集した角膜を厳しくチェックし、角膜移植待機患者に届けられます。この場合の提供者は匿名で、性別・人種なども一切知らされません。
角膜移植までの準備
角膜移植には、ある一定基準以上の健康状態で臨まなくてはなりません。したがって角膜移植の手術前には、必ず身体検査、血液検査、心電図などの事前チェックが行われます。
また、リスクの伴う麻酔は患者の健康状態や年齢などを考えて、全身麻酔か局所麻酔をしますが、局所麻酔をする時には耳の後ろと下の瞼に注射をすることになります。
他にも事前準備として、1〜2週間前からコンタクトレンズの着用を避けたり、同じく1〜2週間前から手術中の出血を防ぐため、アスピリンの服用を控えます。
手術当日は何も食べず飲み物も飲まずに手術を受けます。また、感染を防ぐために前日から抗生剤の点滴を入れることもあります。
角膜移植の流れ
移植手術の全過程は顕微鏡を用いて行われます。トレピンと呼ばれる環状の刃をもったナイフを使用して、病変した角膜の中心を取り除いていきます。
アイバンクを通して提供された角膜をボタン状に切り取り、髪の毛の10分の1の非常に細かいナイロンの縫い糸で所定の位置に縫い合わせていきます。
この手術と同時に白内障の治療を行ったり、また以前に行った白内障治療のためのレンズが合わなくなった人も、この手術と同時に新しいレンズに入れ替えることができます。
手術が終わったら、眼帯をかけ安静にします。痛みは感じる人とあまり感じない人と個人差がありますが、非アスピリン系の鎮痛剤を使用して痛みを無くすことができます。
術後の経過
手術後の経過ですが、角膜の上皮は個人差もありますが、通常1日〜4日間で治癒します。角膜の上皮が治癒し、落ち着いてくるまでは眼帯を着用します。眼帯が取れた場合にも、術後数ヶ月の間は常に眼鏡をかけて保護する必要があり、就寝時にも無意識のうちに目を触ってしまったりしないようにします。
移植された角膜には血液が通っていないため治癒に時間がかかり、縫い糸は3ヶ月〜1年ほどそのままにされるか、永久に残しておくこともあります。
また、数週間で新しい角膜が安定し、日常生活に差し障りのない視力が戻ってきます。しかし、完全な回復は早い人で数ヶ月、人によっては数年かかることもあり、定期的な検診が必要です。
拒絶反応について
角膜移植の拒絶反応とは、移植された角膜を免疫細胞が異物と認めると、角膜の内皮を攻撃し始め、攻撃された角膜に水がたまってしまい、膨張し白濁してしまいます。
多くの場合は移植手術後1年以内におこりますが、それ以降に拒絶反応が出ることもあります。また、拒絶反応には光に過敏になる、視力の低下、疼痛などの前兆があり、発見が早ければ約90%の割合でステロイド剤などの薬品で治癒することができるといわれています。
通常は手術後から、拒絶反応を予防するために数ヶ月間ステロイド点眼薬を使用します。拒絶反応があまりにも強いものであれば、死亡したり、脳障害がおこることもあり、定期的な検査は必ず受けなければなりません。
